as red flag - reviews about game

under chequered flag

NOV.16.2007

『ゲームセンターCX』が獲得した視点


 課長on!(*1)……というわけで、ファン待望のニンテンドーDS『ゲームセンターCX 有野の挑戦状』(以下『CX』)を買ってきた。
 いわゆるレトロ風なゲームを多数収録していることが売りとされている『CX』だが、もっとも注目すべきポイントは架空のファミコンタイトルの出来映えなどではない。ほんとうにレトロなゲームで遊びたいなら『ナムコミュージアム』でも『ジャレココレクション』でもやればいいし、もっと言えばもう一度ファミコン買えよという話である。このゲームが興味深いのは、ニンテンドーDSの上画面で繰り広げられるベタに並行して、下画面にメタな視点を導入していることだ。
『CX』では、下画面に自分の分身と「ありの少年」がステレオタイプな昭和の家の居間でテレビに向かっている姿がつねに描かれている。われわれは自分でキー操作をしつつも、構造上は彼らが遊ぶゲームを後ろから見ているのであって、ああそれってたしかに20年前の自分の姿だ。そう考えると、急に「自分がゲームをしている」ということに自覚的になる。そんな作用を及ぼすゲームは、ほかにちょっと思い浮かばない。
 いまがどうだか知らないが、われわれが子供のころは、ゲームと言えば友達の家に集合して遊ぶ――たとえそれが1人用RPGであってもだ(*2)――ものだったし、学校に行けばかならずクラスメイトがゲームの話をしていた。インターネットなどなかったから攻略情報も貴重で、小遣いをはたいて「裏技集」などを買ってくれば、自分が持っていない(買う予定もない)ゲームの裏技まで読みあさり、またそこで得た情報は惜しげもなく小さなコミュニティのなかで共有した。もしかしたら、「ゲームをやっている時間」よりも「ゲームについて語っている時間」のほうがはるかに長かったかもしれない。
『CX』は、そういう空気全体をDSに押しこもうと試みている。その試みをうまく表現できたかどうかはともかく、80年代のわれわれがゲームそのものというよりは「ゲームが作る場」で遊んでいたことを再認識させるのに成功したことは間違いない。このゲームはかつてのファミコンプレイヤーに対する懐かしさの喚起を狙っているように見えて、もっと意欲的に空間の再生成まで踏み込んでいるのだ。そここそを高く評価したい。
 メニューにあるありの少年との「雑談」は、コントローラーを持ってテレビの方を見ながら会話していたかつての自分たちの象徴として機能する。そしてその象徴性こそが、『CX』をたんなるメディアミックスから生まれた企画ゲームではなく、メタを有する良作へと押し上げているのである。


(*1)なお、残念ながらわたしが勤める会社に「課長」という役職はない。
(*2)わたしは他人がやる『ドラクエ』を後ろから見るのが好きだったクチである。


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