NOV.15.2007
カオスな楽しみ
最近は『ビューティフル塊魂』を好んでやっているが、やはりこのゲームのおもしろさは単に世界を乱雑化することの快感によってのみ支えられているのではなく、その快感が指数関数的に、しかも連続的に上昇することにあるのだと気づく。
たとえばRPGでのレベル上げが作業として捉えられがちな理由として、自分が強くなればなるほど「より強くなるまでに費やさなければならない時間」が延びていくことや、(たいていのRPGにおいては)あるレベルから次のレベルに上がるまでの間おなじ能力のまま闘い続けなければならないストレスにさらされることなどを挙げられるだろう。多くの『ドラクエ』プレイヤーは、ひたすら街の周囲を歩き回ってモンスターを倒しても一向にあの脳天気なファンファーレが鳴らず、3回目のはぐれメタルにも逃げられたところで我慢の限界に達して、王かあるいは神父の前に跪いて「あと○○で次のレベルになるでしょう」という言葉をうやうやしく拝聴したことがあるはずだ(そして目指すレベルがまだ遥か先であることに絶望するのである)。
しかもようやくレベルが上がったところで、パラメータの上昇量はつねに一定である。Lv1→2でも、Lv40→41でも、「ちから」はたぶん3くらいしか上昇しない。ということは、能力の上昇に伴って「レベルが上がったときの能力上昇率」は徐々に下がっていくことになる(*1)。。
こんな具合に、RPGにおける「キャラクターが強くなっていく快感」の度合いについて、費やされる資源(時間・労力など)をx、快感の量をyとすれば、その関係性はy^2=xであらわすことができよう。焦らされることでカタルシスを得られる面があることを否定する気はないが、しかし効率的に楽しんでいる感じはしない。逆に言えば、RPGで戦闘シーンの見せ方やシステムの斬新さがつねに追求されるのは、結局そうしなければプレイヤーが飽きるからで、いわば時間のムダをムダと感じさせない工夫なのである。
さて、『塊魂』だ。このゲームにおいてステージ開始時の塊は非常に小さく、自分より大きなものには弾かれてしまうので、序盤は小さいものを求めて動きまわることになる。しかも小さいものを巻き込んでもそれが小さい故になかなか塊は成長していかない。だがその時間に耐えて塊が大きくなれば手近なものをどんどん巻き込めるようになり、そうなれば今度はその対象が大きい故に塊の成長も早い。より大きくなればより大きなものを巻き込むことができて、成長ペースはさらに上がっていく……(*2)。
この快感曲線はy=x^2であらわすことができるから、これはもうRPGの面倒さと対極と言っていいだろう。そもそもRPGとアクションを比較することにどんな意味があるのかと論難されると困るが、観点を快感と労力の関係性に限定することができるなら、「やればやるほど」どころか「やった以上に」楽しめる『塊魂』のそれは理想的なものだ。おそらく開発者もそれをわかっているはずで、『~ビューティフル』において宇宙に飛び出し、わずか18分で100万kmまで到達しうるスケールになっているのは、その加速度関係に蓋をしないようにしようという設計ともいえる。こういう快感の上昇には「やりすぎ」というものが存在しないから、へんにリミットを設けないほうがよいのだ。
ゲームではキャラクターとの強さとプレイヤーのプレイの精度が反比例する傾向にある。ゲームのなかでキャラクターが強くなれば戦術や戦略を無視した力押しが可能になるから、これはあるていど仕方のないことだ(*3)。このゲームもその例からは漏れず、エンディングに直結する「巨星」ステージの最後ではやみくもに転がすだけでかなりの成果を挙げることができる。こういう大味な状況はふつうあまり歓迎されない(「たたかう」を連打するだけで敵を倒せる『ドラクエ』はあまり楽しくない)ものだが、『塊魂』においては「最初に不自由だった自分」と「限りない自由を手に入れた自分」が加速度的な快感曲線を通じてダイレクトに連結されるから、気分がいいことこの上ない。
そういうわけで翌日の出社が早いことがわかっていつつも、つい、寝る前に少しXboxの電源を入れたくなるのである。
(*1)おなじ3のパラメータアップでも、10→13になるときは30%の上昇だが、60→63のときは5%でしかない。もちろん一定のレベルに達したときに覚える「技」や「魔法」、あるいはレベルとは独立したアビリティ成長システムなどによって、この加算的な能力上昇に乗算要素を導入することは可能だし、実際すべてのRPGがそうしているだろう。
(*2)個人的には人間を巻き込めるようになる1m80cmくらいからプレイがぐんと楽しくなる。
(*3)もちろん、「レベルを上げて力押しで進めるようにする戦略」というものは存在するし、それを選択するのもまったくの正当である。
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